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インタビュー

2019.04.26

インタビュー vol.11 横浜商科大学 伊藤 穣 教授

アスリートjob インタビュー vol.11
横浜商科大学 常任理事 入試広報部長
伊藤 穣 教授ITO YUTAKA

大学の役割 × 体育会系人材の
成長へのガイド

アスリートJob’s EYE!

横浜商科大学の伊藤穣教授のアスリートJobインタビュー。
大学の先生のインタビューとしては、至学館大学の教授以降の第二弾!今回は弊社社長の中田とキャリアトレーナーの若林(元プロサッカー選手)との対談にてお送り致します。
大学の先生のインタビューなので、一見アカデミックな内容が多いように思うかもしれませんが、実はとてもシンプルなソリューションにたどり着くのが面白い。また、アスリートや体育会系人材がその力を発揮するために何が必要か、どう考えるか等ヒントが満載な内容になっています。
横浜商科大学は2020年に経営情報学科にスポーツマネジメントコースを新設する予定です。対談を通して、その新しい教育課程からどのような人材が育成され、社会に輩出されていくのか、今から大変興味があるところです。伊藤教授の話は、とてもシンプルではあるが、根底には相当な勉学と調査、研究の結果が裏付けられているはず。今回は特に体育会系学生や社会人になったばかりの方々は必見です。

中田:
Jリーグが発足して27年経ちます。当時活躍していた選手たちは、まさにセカンドキャリアに突入しています。アスリートJobは、そのような人材に対してキャリア支援をしていければと思いスタートしました。
教授:
それはたくさんの可能性がある、そして社会的な意義がある事業だと思います。やはり、問題があるところにはニーズがある、ということですから、ビジネスにもなるということですね。
中田:
労働人口が今後ますます減少していく中で、スポーツをする人口自体はそんなに大きな減少はないと推測しておりますが、アスリートや体育会系人材として、今後は新卒の中でも体育会系人材の競合は必至だと思っています。2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、あるいは今のフィットネスブームも相まって、スポーツ人口はあまり減らないと思います。そんな中で、弊社はアスリート・体育会系人材の教育にはとても力を入れています。ただの「人材紹介」ではなく、アスリートや体育会系人材と真剣に向き合い、セカンドキャリアという課題に対して、人材教育という観点を大切にしていることがアスリートJobの特長です。
教授:
それは、本学が作ろうとしている新しいスポーツマネジメントコースと考え方が非常に近いと思っています。本学が作ろうとしている教育課程は、決してアスリートを育成するということではありません。高校まで一生懸命スポーツをやっている高校生の中には、部活動や課外活動をやりなさい、または部活入りなさい、という指導の結果、スポーツは一生懸命やり、スポーツには興味を持つけれど、その他には興味をもっていない、という高校生がたくさんいます。しかし、その多くは将来ビジネスパーソンにならざるを得ないし、トップアスリート以外はほとんどそうですよね。そうなると、その多くの学生を大学に入ってから「再教育」するということも必要だし、もちろん、高校時代から自主的に勉強している人もいるかもしれませんが、必ずしもそうではないので、しっかりしたビジネスパーソンに育て上げないといけないと思います。
中田:
体育会系人材には、学生時代にスポーツ・体育を学び、同時に部活をやっている人材と、学業はスポーツ以外だけど部活はスポーツをやっている人材と両方の意味合いがあります。体育会人材の定義やスポーツと教育というのは奥深いと思っています。
教授:
本学はどちらかというと、後者の学生を考えております。決してトップアスリートを育てたいということではありません。もちろん、本学の野球部にはそれなりの実績があり、何年かごとにはプロ野球選手を輩出していますので、スポーツ・体育を学ぶ人材も育てないといけませんが、その中でも、野球で食べていける学生は数年に一人ですから、その他の学生はスポーツ・体育以外を学ぶ人材です。その学生たちも将来幸せになるような教育を考えることが、もともと問題意識としてあり、教育機関としては大事だと思っています。
中田:
体育会系人材の採用を検討している企業様と話をしていると、そのニーズは昔と変わらない感じがします。やはり、「心・技・体」ではないですが、「スポーツマンシップ」ということに関しては、いつの時代も求めているものだと思います。
教授:
スポーツマンシップとは何か?という問題意識も、新設のスポーツマネジメントコースにはあり、そういう授業も展開していく予定です。「君たち(体育会系人材)がもつべきエッセンスとは何か?」という観点で、スポーツマンシップについて扱う「スポーツ倫理」という講座は予定しています。
中田:
「心・技・体」の基礎になる心の教育ができるというのは、体育の観点では何よりも大事なことですね。
教授:
自分はスポーツマンなんだ!といっても、何か強みだということを本人は恐らくわかっていないと思います。なので、何が強み(優れている)か、何が他の人と違うのか、ということが認識できれば、自分の得手不得手がわかるし、伸びるんだと思います。それから、皆様が仰っているとおり、スポーツマンシップというものがいかに大事にされている価値かというのを明確にしたいと思っています。もちろん、スポーツマンシップとは何か?という議論は様々にあるのだと思います。
中田:
2020年4月新設のスポーツマネジメントコースは、簡単にいうとどんな教育課程になりますでしょうか?
教授:
もともと、本学ではスポーツマネジメントの科目群を2000年に入ったぐらいからスタートをしておりますが、まとまった教育課程としては2020年4月に新設となります。やはり、スポーツに興味をもつ学生は多いし、「スポーツマネジメント」というテーマも人気の科目群ではありました。ですので、スポーツを切り口にして、ビジネスを学んでもらえたら学生の視野が拡がると考えています。実際には、その講座を受けたからといって、スポーツビジネスの世界に進めるかいうとそんなに甘い世界ではないし、スポーツビジネスのマーケット自体も経済全体からみるとそんなに大きなものではないです。ですが、興味のあるスポーツを通じてビジネスを学んで欲しいと思います。
中田:
例えば、弊社で「Jリーグ横浜FCの営業員の募集」という求人広告を出すと、非常に多くの応募がきます。その中には営業未経験者もいるし、他の業界での営業の経験者もきます。そのような場合やスポーツビジネスでの仕事という側面を考えると、年齢の若い方はイキナリ横浜FCの営業職として仕事をするよりは、どちらかというと、他の業界で営業というビジネスを経験してから、横浜FCの営業をするのはアリだと思っています。これは、営業職だけではなく、マーケティング等の職種もそうだと思っています。スポーツを知っているからできる、ではなく、営業という仕事、つまり、ビジネスの基礎を経験しているからスポーツのビジネスができる、という循環です。少しコストは掛かってしまいますが。
教授:
教育コストの観点もあるかと思いますが、スポーツビジネスも「ビジネス」である、ということを認識してもらいたいですね。そのための教育という観点で、いろいろなところをみたほうが良いですね。やはり、アスリートも将来に向けてどうしていったら良いのかというと、ビジネス一般に目を向け、様々なことに興味を持つかどうかも大事だと思います。スポーツをやる方は「やる気」はあると思いますので、興味をもったらきっとやり遂げるのだと思います。でも、問題は興味をもつかどうかです。今までのフィールドと違うことに興味をもつかどうか、興味をもてる方は再教育をしたらうまくいくと思います。いかに興味をもたせるか、これも大事だと思います。教える側が、いくら「これが役に立つんだ!」と言ったところで、興味をもたないと意味のないものになります。
中田:
一方で、プロスポーツ選手、アマチュアや準プロスポーツ選手、企業スポーツ選手はそれぞれまったく異なるスタンス、考え方、キャリア形成を持っている感じがします。例えば、企業スポーツ選手はそもそも普通にビジネスパーソンとして仕事をしているので、セカンドキャリアがとてもスムースに感じます。
教授:
企業スポーツの方は、きちんとビジネスパーソン教育を受けているのでしょうね。当たり前かもしれませんが、日中は働いているんですから。アルバイトではなく、会社の中で責任がある社員として仕事をすると、ビジネスの意義や、いかに人に役立っているか、会社に貢献しているか等が見えるんでしょう。学生もアルバイトをやると、社会人になったつもりになってしまいますが、実はまったく違うということがわかっていないのです。会社に入って責任をもって仕事をするということと、時給をもらって仕事をすることは全然違うことがわかっていないと思います。それと同じようなことなのでしょうか。
中田:
それぞれのスポーツ選手によっては、それらの考え方やスタンスには相当な差があるのは感じます。特に、企業スポーツのトップアスリートの方と話をすると、スポーツ選手というより、ビジネスパーソンと話をしていると感じるぐらいしっかりしています。100%仕事もして、100%スポーツにも没頭しているような感じで、その「100%」という言葉は深いものがある感じがします。
教授:

本学の新設のスポーツマネジメントコースを作るにあたり、いろいろ調べたのですが、アスリートの人は、そもそもセカンドキャリアを考えて現役を過ごすことが良いのだろうかと考えさせられました。これは難しいことでもあるでしょうし、どっちつかずになってしまうのではと思いました。アスリートは、現役の時にはスポーツのことだけを考えれば良いのか、それともセカンドキャリアを意識しつつやったほうが良いのか。次のステージを意識しつつ現役を過ごしたアスリート(元プロサッカー選手の宮本恒靖さんなど)のインタビューで、現役の時から通信制の大学に行っていること等が書かれていたのを見たことがあるのですが、そういう姿がアスリートとして望ましい姿なのか、それとも、現役の時はとにかく頑張ろう、終わったらセカンドキャリア(デュアルキャリア)を頑張ろう、のほうが良いのか、どちらなのかなと疑問に思いました。

中田:
その議論はもうかなり前からされてきていますね。スポーツに関連する企業もセミナー、パネルディスカッションのようなものをやり啓蒙していた記憶があります。欧米と日本の比較とかですね。まだ、そこでは「答え」を持ち合わせてはいなかったと思います。仮に、もし自分がアスリートの立場なら、目の前のスポーツ、競技の成績のことでいっぱいで、次のキャリアのことは考えないような気がします。
教授:
そう思います。そういった記事を読んでいた時に、デュアルキャリアを考えながらアスリートを育成するというような観点ではなく、またアスリート自体を育てるのではなく、高校生まではアスリートだったかもしれないけれども、その後はユニフォームから背広に代えて、しっかりしたビジネスパーソンを育てること、それが大学にできることだと考えを新たにするようになりました。
若林:
一方、プロのアスリートの特長として、サラリーパーソンとは違って、練習時間が少ない競技は、ある程度、普段から時間に余裕がある場合もあると思います。その時間を、自分への投資として勉強する機会を設けるなどをして、有効に使ったほうが良いと感じる。やはり、現役時代にあまりにも「何もしない、勉強しない」時間が多いと、それはそれで引退後は困ることが多いのではと思います。アスリートJobではそれらの準備も貴重なことであることを伝えていきたいです。
教授:
プロスポーツ選手は時間に余裕がある方もいらっしゃるのですね?そういった方にとってはセカンドキャリアを考えるキッカケを提供することは良いのではないでしょうか。実は、ちょうど先日、高校生対象に「出前授業」をやりました。出前授業というのは大学のプロモーションも兼ねて、大学の先生が高校に行って授業をすることなのですが、そこで「機会費用(オポチュニティーコスト)」の話をしました。「君たちはYouTubeを観ている時間はタダだと思っているかもしれないけど、とんでもない。アルバイト代で時給換算すれば1,000円ぐらいかもしれない。けれども、君たちが毎日YouTubeを観ている1時間を自分の勉強の為に投資したら、将来それが収益機会を生んで、月給が2万円とか3万円とか上がるかもしれない。それは生涯を通して考えたら2,000万円を超えることになる。そうすると1時間YouTubeを観るコストは15,000円ぐらいになる。」という話をすると、中にはビックリした顔をする高校生がいます。このような話は、いつもは大学生にするのですが、喉元過ぎれば熱さを忘れるかもしれませんが、自分への投資の時間、機会費用のこと等についてはしっかり考えて欲しいと思います。
若林:
現役選手もそのようなことを大切にして欲しいと思っていますし、なかなか知る機会もないように思います。でも、近しい人にそういうことを教えてくれる人がいると、「聞いてみようかな」という気持ちにはなります。
教授:
いずれは必ず引退するのですから、空いている時間は次のことに向けて考えても良いと思います。将来のために聞いてみて面白い話があるんだよ、ということから初めても良いのではと。
中田:
そもそも本当に超トップアスリートは、スポーツもできるし、商才もあるように感じます。やはり、両方できるというのは、文武両道という側面もあるのでしょうか。多少のつながりのようなものはあるのでしょうか。
教授:
自分の学生時代を振り返るとスポーツができる人は、成績も良かったように思います。自分の出身高校も文武両道で、甲子園に行った時の野球部のレギュラーメンバーの半数が、東京大学に進学したと聞いています(記憶違いがあるかもしれませんが)。甲子園では一回戦で負けてしまいましたが(笑)。その時は、甲子園に参考書を持っていった部員もいたそうです。このような学校では、学生のほとんどが何かの部活に所属して、それなりに強いですね。学業ができるところはある程度スポーツが強い、という関連はあるのだと思います。逆に、スポーツができるから勉強ができるか、というとそれはそれで別のものだと思いますが、何らかの意味で脳が活性化されているようには感じます。ここは専門分野ではないので、詳細はわかりませんが。
中田:
やはり、文武両道というのは何かあるのでしょうか。
教授:
そこが難しいところでもありますね。スポーツ選手をどうプロモートしていくか、あるいはスポーツを頑張っていた高校生をどう頑張らせるか、という時に、その中には今までは訓練を受けてきていないけれども、今後、訓練さえすれば、あるいはモチベーションを与えさえすれば、ビジネスパーソンとして頑張れるという学生と、そこまではできない学生に分かれてしまう、その見分けをしないといけないと思います。ただ、今まで勉強はさほど頑張ってこなかったけれど、スポーツを頑張ってきた学生は、潜在的に良いものをもっている、成功する確率の高い人材と感じています。
若林:
以前、基礎能力がアップすると、スポーツでやってきたことが開花するというお話を仰っておられましたね。
教授:
スポーツの訓練だけではビジネスはできるわけはないので、そのスポーツの訓練に加えて、基礎的なビジネス教育というか、社会教育あるいは教養というものを身に付けたら、今まで自分がやってきたことがどう役立つか、自分で判断できるようになると思います。社会がどういうものかわからなかったら、立ち向かう相手がわからないわけで、それはどうしようもないのだと思います。社会がどういうものかわかってくれば、その中で自分は何をもっているのか、自分で気づくと思います。そもそも大学の4年間というのは広い意味での教養教育の期間であり、例えば経済学部の学生全員が経済学のスペシャリストになるかというと、そんなことはなく、多くは経済学を教養として身に付けています。それをすぐにビジネスに役立てているという人はいないのだと思います。ということは、アスリートにとって、大学で何を学んだか、ということは教養として意味があり、専門性を身に付けていないからビジネスで活躍できないというのは、ある意味では的外れなことだと思います。アスリートではない他の人も大学の4年間で深い専門性を身に付けている人は少ないのです。もちろん中には専門性を身に付けて研究者になる人もいますが、今の大学では例外です。
若林:
今度の新設のスポーツマネジメントコースでは、このようなことも含めて講座や授業に盛り込んでいかれる予定ですか?
教授:
はい、そうです。4年制の大学はあくまでも専門の基礎教育あるいは教養教育の機関ですので、専門性を通じた教養教育をしていきます。
中田:
私も、筑波大学体育系の大学院まで在籍しておりましたが、本当にいろいろな学生、アスリートがおりました(笑)。ちなみに、私自身も専門学校のスポーツマネジメント学科の教員でもあり、またスポーツクラブのインストラクターを長くやっていたこともあり、勉学とスポーツの能力についてはいろいろな方と出会ってきました。現役のインストラクター時代に、運動能力が日本でもトップクラスを誇っている人(当時の上司)が今は経営者をされています。これはちょっと別の見方ですが、スポーツをやっている人はまわりの人が寄ってくる人間性というか、人に好かれる人が多いかもしれません。
教授:
体育会系人材の能力って何だろう?と考えた時に、体育会系人材は人に好かれる能力は高いんです。もちろん、人によってはいろいろですが、大雑把にみても、惹かれるというか、そういう人が多いような気がします。あれは何なんでしょうね?口だけではなく、何か人の為にやってあげる、ということもあるのでしょうか。フットワークが軽い人が多い気もします。
中田:
感覚ですが、競技のトップにいる人は、いろいろ積極的に教えてくれる、ある種の余裕がある、ようにも見受けられます。あくまでも感覚的なものですが。
教授:
この感覚知であることがポイントで、行政への提出書類でも、「スポーツパーソンはこういう特性がある」というのが感覚的なものでもあり、エビデンスがなかなか書きづらい、ということがありました。難しいところですね。ただ、多くの人がそう思っているということは、何かあるのだと思います。
中田:
アスリート人材は、競技はトップクラスの選手から勉強が苦手な方までと、幅がとても広いけど、何か共通点があるようにも思います。同じビジネスパーソンとして、何か素養みたいなものとか。
教授:
正直さや礼節などを持っているのではないでしょうか。ただ、体育会系の礼儀というのが、他の社会の中での礼儀と必ずしも同じではないということには気づいて欲しいとは思います。体育会系の礼儀というのが、時に他の社会の中で受け入れられないことがあるのも事実です。社会では多様な価値を持った方が一緒にいますが、アスリートの方はなかなかそういう機会がないので、スポーツ界のマナーと他の社会のマナーの違いに気づきにくいのではと思います。例えば、体育会系独特のヒエラルキーのようなものとか、これは他の社会の中で少し受け入れ難い、過度な上下関係への違和感、はあると思います。しかも、IT社会という中で、会社組織はどんどんフラット化しています。そんな中で、組織をすべてヒエラルキー的に考えてしまうと戸惑うのではないかと考えています。
中田:
ヒエラルキーは、競技特性による差もあるような気もします。私がやってきたサッカーは、私の世代でも中学生の時ぐらいは先輩に対して「君づけ」や「呼び捨て」で呼んだりしていた友人もいましたし、大学でもそのようなことを見てきました。
教授:
サッカーのほうが自由な雰囲気、野球は封建的、というふうに見える、ということもあるかもしれませんね。社会が自由化しているので、野球のようなスポーツも少しは考える余地もあるかもしれませんね。
中田:
競技特性でいうと、セカンドキャリアとしてみても、アメリカンフットボールの選手は良い企業に就職できる、と聞いたことがあります。もちろん、一概には言えないとは思いますが。
教授:
S商事に勤めている友人が言っていたのが、以前はラクロスが採用側から見て人気の競技だったそうで、なぜかというと、ラクロスは高校までは無いスポーツなので、生徒が高校までしっかり勉強するからだとか。ただ、最近は少し違ってきていて、スポーツに対する真剣度が、プロスポーツのある競技とは違うようで、いわゆるスポーツパーソンらしさ、という点での違いもあるとか。また、体育会系人材と思って採用しても、すべての人材の精神力が強いわけではない、ということを言っていました。
中田:
伊藤教授は、これだけいろいろなところで、様々なアンテナを張り巡らされて、深く考えて、お仕事をされていらっしゃっていると感じます。新設のスポーツマネジメントコースは、今までに無い素晴らしい教育課程になるような気がします。
教授:
本学は小さい大学ですし、商学部しかないので、とにかく「きちんとしたビジネスパーソンを育てる」、というのがミッションです。その中で、少子高齢化の中でも、どういう人たちが活躍してくれないと困るのか、という観点からもアプローチしています。また、自分がみている学生たちの中には、もっと興味をもってくれるようになれば、良いビジネスパーソンに育つのに、と思う学生が多いこともスポーツマネジメントコースを設置する当初のキッカケでもあります。
中田:
伊藤教授の話を聞いているとワクワクします。日本初というと言いすぎかもしれませんが、日本にはなかなかないオンリーワンのコース、になると良いですね。
教授:
ありがとうございます。是非、そうしたいと思っています。スポーツ好きの学生たちがしっかり稼げる社会が必要だと思っていますし、それが無いのは勿体ないことだと思っています。
中田:
最後に、アスリートのセカンドキャリアについてどう思われているのか、もう少しお聞かせください。
教授:

年齢が若ければ若いほど頭が柔軟ですし、30代よりは20代のほうが有利ということもあるかもしれませんが、社会は我々が実際に生きているところなので、「社会」に出るということはそんなに難しいことではありません。社会に対して違う認識の仕方をしましょうね、あるいはちょっと違う見方をしましょうね、と言っているだけなので、今まで培ったことが無駄になることは絶対にないということを知って欲しいです。ほんのちょっとの見方の転換をガイドするような教育が必要ではないかと思っています。キャリアとして、法律家や公認会計士のような専門家になるわけではないと思うので、そんなに難しい勉強が待っているわけではありません。ものの見方を少し変える、ということだけだと思います。そもそも本来、そんなに難しいことは誰も要求されてはいないのだと思います。今まではスポーツを通じて喜びを与えていたけれど、これからは違うことで喜びを与えましょうよ、ということです。その方法を知らないからわからない、というだけだと思います。アスリートは、恐らく他の人に何かをやってあげたいと思う気持ちがすぐに行動に移せる人だと思うので、潜在的にはすごく良いビジネスパーソンになれると思います。